青色申告と白色申告というように、確定申告にはこの2種類があります。
青色申告の場合は事前に申請が必要になりますが、税制上いろいろメリットは多いです。帳簿付けなどの作業量は多くなりますが、節税するなら青色申告がおすすめです。
青色申告のメリットのなかに「純損失の繰越控除」というのがあります。簡単に説明すると、「赤字を3年間くりこせますよ~」といった内容の特典です。
今回は、この制度について紹介したいと思います。
青色申告が大前提
まず、純損失の繰越控除の説明に入る前に、この特典を使うには青色申告することが前提になります。
そして、青色申告するには、実は事前の申請が必要で、その年の3月15日までに「青色申告しますよ~」ということを申請する必要があるのです。
まずはこのことを前提に考えてください。
もし「あ、青色申告の申請忘れてた」という場合は、今年分は白色申告し、次の年から青色申告に切り替えましょう。
青色申告の3つの特典
冒頭でも説明しましたが、青色申告は節税上、有利な特典がいくつかあります。そのなかで代表的なものを紹介します。
青色申告特別控除 | 最高65万円までの所得控除が受けられる制度 |
青色事業専従者給与 | 生計を1つにする配偶者もしくは親族に支払った給与を必要経費として考えることができる制度 |
貸倒引当金 | 年末までの売掛金や貸付金の合計金額の5.5%までを経費として勘定できる制度 |
青色申告の特典は主にこの3種類がありますが、ほかにも「純損失の繰越控除」という制度があります。
今回は、この制度について詳しく説明しますね。
純損失の繰越控除とはどのような制度なのか
純損失とは、わかりやすくいうと「赤字」のことです。つまり、「赤字が出た場合は繰り越せますよ~」といった制度になります。
この制度を使うと、赤字が発生した次の年から3年間繰り越すことができます。つまり、その年に赤字が出た分は、次の3年間のうちに所得から差し引くことができるのです。
たとえば、150万円の赤字を出した場合、翌年の所得から「純損失」として150万円を計上できます。
それだけ翌年の所得を縮小できるので、「赤字になって終わり」ではなく、きちんと翌年以降の節税に役立てることができるのです。
これが「純損失の繰越控除」という制度です。
純損失額は異なる事業区分でも合算できる
この制度の特徴を1つずつ説明します。
事業を行うにしても、たとえば不動産や一般事業など、異なる所得区分で収入がある人もいるはずです。
純損失の繰越控除という制度は、異なる所得区分でも、それぞれの損失を合算することができます。つまり、赤字は赤字といった具合に、面倒なことは考えずに、損失として繰り越すことができるのです。
古い年に生じた赤字(損失)から控除される
この制度を使うと、今年損失が発生し、また翌年も損失が発生することも十分に考えられます。
もちろん、その赤字は繰り越して控除されるわけですが、控除される際、古い年に発生した損失から控除されるため、損失が3年を超えて控除しきれなかったということが起こりにくいのです。
たとえば、平成29年に損失が発生し、翌年の平成30年も損失が発生した場合、次の年は平成29年分の損失から控除されることになります。
そこでまだ所得が上回っていれば、次に平成30年分の損失が控除され、残りはさらに翌年に繰り越せるという制度です。
つまり、赤字が賞味期限切れの状態になるのを防ぐことが可能なのです。
純損失の繰越控除の制度を受けるための手続き方法
このように、純損失の繰越控除という制度は、簡単にいうと「赤字が出たのであれば、繰り越してでもいいので、きちんと所得と相殺しますよ~」という親切な制度というわけです。
では、その制度を利用するには、どういった手続きが必要になるのでしょうか。
この制度を受けるには、次の2点の要件を満たしている必要があります。
- 確定申告書を提出期限までに提出すること
- 純損失が発生した翌年以降も、きちんと連続して確定申告を行うこと
まぁ期限を守るのは、この制度を利用するためだけでなく、余計な課税を受けないためにも必要なことです。
ポイントは、確定申告を連続して提出するという点です。
たとえば、赤字をだしてしまい、翌年以降に廃業したとします。しかし、その赤字を控除してもらうには、たとえ廃業しても確定申告を行う必要があるのです。
ですから簡単にいうと、「純損失の控除を受けたかったら、毎年確定申告してくださいね~」ということです。
この2つの要件さえクリアしていれば、この制度が提供されます。
次に必要書類についてです。
この制度を受けるには、確定申告の際に「申告書第四表(損失申告用)」を提出する必要があります。
申告書Bの第一表と第二表は、青色申告をすれば提出したことになります。それと一緒に、第四表も提出することになります。
その書類の内容は、主に次のような事項になります。
損失額または所得額 | それぞれの所得区分における損失額を計算し、記入します。 |
損益の通算 | それぞれ所得区分ごとに損益を計算し、純損失の合計額を記入します。 |
翌年以降に繰り越す損失額 | 翌年以降に繰り越す損失額を記入します。 |
繰越損失を差し引く計算 | 過去3年分の損失額を記入します。 |
これらの内容を申告書第四表に記入し、青色申告の際に提出しましょう。そうすれば、赤字が繰り越され、翌年の所得と相殺することができます。
つまり、純損失の繰越控除を受けられるということです。
おわりに
青色申告の特典でもある「純損失の繰越控除」という制度。とても難しそうに聞こえる制度ですが、節税上は非常に有効な制度になります。
本来であれば、事業で赤字が出るのは好ましいことではないかもしれません。しかし、個人事業主たるもの、いつどのように流れになるかはわかりません。
もし赤字が出た場合は、それをきちんと控除の対象として、所得から差し引いてもらいましょう。そうすれば、必然的に課税額は低くなります。
あるいは、積極的な投資を行い、あえて赤字申告するケースもあります。そうすれば見た目上は赤字ですが、課税もされませんし、次への投資ができるので、とても賢い資金ぶりと言えるかもしれません。
そのあたりの高度な節税対策はさておき、純損失の繰越控除という制度は、個人事業主にとっても非常に有効なものです。
この際に、ぜひ覚えておいてください。