確定申告に備え、日々記帳をコツコツやっているかと思います。その際、次のようなことを疑問に思ったことはないでしょうか。
12月の経費を支払う時期が翌年1月の場合、計上は今年分にするの、それとも翌年に回すの?
12月の売上が翌年1月に振り込まれる場合、売上は今年分、それとも翌年分になるの?
といったように、年をまたぐ取引がある場合、今年分として計上するべきなのか、翌年分の計上に回すのか、迷ってしまう人もいるはずです。
そこで、今回は決算月(12月)をまたぐ取引の場合、その費用計上の時期について説明しますね。
経費計上における「発生主義」という考え方とは?
たとえば、事業上の発注などで、注文した月に経費として計上するのか、それとも実際に仕入れ分の費用を振り込んだ翌月に経費計上するのか、どちらが正しいのでしょうか。
これが年をまたぐタイミング、つまり12月か翌年1月に経費計上するかで、その年の会計が変わってくるので、計上のタイミングは非常に重要です。
このような場合は「発生主義」という考え方が採用されます。つまり、その費用が発生したタイミングで計上するという考えです。
これが発生主義です。
この発生主義という考え方について、国税庁のホームページには、次のような内容が書かれています。
必要経費として計上できる金額は、その年に債務が確定した金額です。したがって、たとえその年に支払った費用でも、その年に債務が確定していない場合は、その年の費用にはなりません。
一方、その年に支払っていなくても、その年に債務が確定しているものに関しては、その年の費用となります。
つまり、実際に支払った支払っていないに関係なく、債務が確定しているかがポイントになるようです。
ですから、債務が確定した時点で経費として計上するのが最も正確で、無難です。
たとえば、「今年は利益が多いから、年を越す前に経費を先払いしておこう」なんてことが認められてしまえば、簡単に経費を増やすことができてしまいます。
ですから、債務が確定してない以上は、経費として計上できませんし、債務さえ決定していれば、経費として認められるというわけです。
事務所の家賃前払いの場合はどうなるの?
たとえば、事務所を借りている場合もあるはずです。大抵の場合、家賃は前払いになります。ですから、8月分の家賃は7月に支払うのが一般的です。
この場合、実際に家賃を支払ったのは7月になります。しかし、支払い義務が生じるのは8月になってからなので、家賃の経費は8月に計上することになります。
ここで厄介なのは、12月に支払う家賃です。
その場合、支払ったのは12月ですが、それは1月分の家賃になります。したがって、債務が確定するのは1月ということになります。
ですから、この場合、経費として計上できるのは翌年1月ということになります。
このように、「12月に支払っても経費となるは1月」というケースがあります。少し複雑な考え方になりますが、「発生主義」は必ず覚えておきましょう。
収入(売上)も発生主義が適用される
ここまでは、経費を計上するタイミングとして、発生主義が適用されることを説明してきました。
実は、この考え方は収入(売上)にも適用されます。
同様に、国税庁のホームページにも次のような内容が書かれています。
その年に収入となる金額は、たとえ年末までに現金を受け取っていなくても、収入の権利が確定した金額になります。
このような内容が記載されています。
つまり、収入の場合も、実際に受け取る(振り込まれる)前であっても、収入として確定していれば、その時点で費用計上することになります。
たとえば、年末の場合を考えてみましょう。
12月末に収入が確定し、実際にその収入が振り込まれるのが翌年の1月だったとしても、費用としては12月に計上することになります。
つまり、実際にその金額を受け取ったタイミングで計上するのではなく、その金額が確定した時点で計上するという考え方です。これが発生主義です。
反対に、12月の収入でも、キャンセル等の関係で12月中に収入が確定していない場合は、12月の収入として計上することはできません。
その場合は、収入(売上)が確定する翌年1月分の収入として計上することになります。
おわりに
発生主義という考え方。
はじめて確定申告の準備をする人にとっては、少し複雑な考え方になっていたかと思います。
本当であれば、経費なら「出費した日」、収入なら「受け取った日」に計上するのが最もわかりやすいと思います。
しかし実際は、発生主義という考え方が採用されているため、一般的な認識どおりには記帳できません。
たとえば、経費の場合は、実際に支払った日ではなく、債務が確定した日付で経費計上します。ですから、支払いが翌月でも、債務が今月中に確定しいるようなら、今月の経費となるわけです。
これは収入においても同じです。
たとえば12月31日に収入(売上)が確定し、それが翌年1月に振り込まれる場合は、12月の売上として計上します。
しかし、たとえ12月の売上でも12月中に確定していなければ、12月に計上することはできません。その場合は、翌年の1月に計上することになります。
このように、費用を実際に支払った、あるいは受け取った日付とは関係なく、「その金額が確定した日」があくまでも基準になり、記帳するタイミングとなります。
これを発生主義といいますので、ぜひ覚えておきましょう。